Lesson5-5 ホルモン分泌コントロールは美コントロール②

太るホルモン

痩せるホルモンがあるように、ホルモンには太る作用を持つものもあります。

インスリン・・・脂肪溜め込みホルモン

インスリン(インシュリン)は、血糖値を一定に保つためのホルモンです。血糖値が上がると分泌され、血糖値を下げることで血中の糖度を調整しています。このホルモン分泌に異常があると、糖尿病や、高血糖、低血糖などの症状があらわれます。

とても大切なホルモンですが、血中の糖がエネルギーとして消費されるのを促進する働きとともに、消費されずに残った糖を脂肪に運んで蓄える働きがあり、後者の働きにより血糖値が高い状態が続くと肥満につながります。

インスリンが急激に、そして大量に分泌されると、脂肪細胞に糖が運ばれ肥満の原因になります。ダイエットのためには、インスリンの分泌量を増やさないように「血糖値を急上昇させないこと」が大切なポイントです。

それには血糖値を急上昇させる食べ物を避けること、急上昇させない食べ合わせを知っておくことが重要です(食べ合わせについてはLesson3-3で学習しています)。血糖値を急上昇させるものとして最近注目されているのが「精製された白いもの」、例えば下記のものがあげられます。

  • 精製された炭水化物(白い小麦粉を使った製品、白米など)
  • 白砂糖
  • ブドウ糖液糖などを含んだ清涼飲料水
  • 食物繊維のないもの、やわらかいもの

インスリンの分泌を考慮した時、上記のような精製されたものは極力避けたいものです。特に、食物繊維を含まない柔らかい食べ物や飲み物での糖の摂取は、吸収が早いため急激に血糖値を上昇させます

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血糖値を急上昇させないために

しかし、美味しいパンやご飯、甘いスイーツが好きな方も多いことでしょう。全く食べてはいけないわけではなく(我慢することによるストレスもよくありません)、ご褒美としてたまに食べるなど、メリハリをつけるとよいでしょう。

また、血糖値の急上昇を抑える食物繊維が豊富なものを先に食べるなど、食べ合わせや順番を変えることも重要です。(この理由により、サラダなどを先に食べる「食べる順番ダイエット」は有効です。)

また、飲み物での糖は思っているより大量に摂取してしまうため、清涼飲料水や濃縮還元のジュースなどはできるだけ避けるようにしましょう。

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グレリン・・・食欲増進ホルモン・空腹ホルモン

グレリンは胃から分泌されるホルモンで、食欲を増進させるという働きを持っています。「甘いものは別腹」という言葉がありますが、この甘いものの誘惑に負けてしまうのも、グレリンの作用に一因があると言われています。

このグレリンは空腹時に分泌されるホルモンで、上記で説明した食欲調整ホルモンの「レプチン」とは拮抗的な関係で働き、常にバランスを保っていると考えられています。レプチンが出てくるとグレリンの働きは抑えられ、食欲も抑えることができますが、レプチンが減ってくるとグレリンの働きが増し食欲が増進します。そのため、太っていてレプチンが正常に受容できない人はずっと太った状態、太る食スタイルから抜け出せないことになります。
このバランスを正常に安定させるには、レプチン受容体の働きを鈍らせないよう、過剰な体脂肪を減らしていくことが大切です。

また、睡眠不足の場合、グレリンの分泌量が増えることも分かってきているため、しっかり睡眠をとること、規則正しい生活習慣も重要です。

悪い働きばかりではないグレリンの一面

食欲をアップさせるダイエットの悪役なイメージのグレリンですが、一方で最近の研究では、不整脈を引き起こす心臓の交感神経を鎮静化させる働きがあることがわかり、心筋梗塞等の有効な治療薬になる可能性も期待されています。

また痩せるために大切な成長ホルモンの分泌を促すホルモンでもあります。グレリンは本来、空腹で体内のエネルギーが不足しがちなときに、エネルギーの補充を促すため分泌されるホルモンなので、必要な時に食欲が出てくるために必要なホルモンでもあるのです。成長ホルモンの特徴に「空腹時に分泌される」というのがありましたが、グレリンによって胃が空っぽの状態だと脳に信号が伝わると、血糖値をあげるために成長ホルモンが分泌される、というホルモン分泌の一連の流れがあります。

 ホルモンの相互関係により私達の体は維持されている

ここまでで分かるように、 ホルモンは相互に関係し合いながら私たちの体を維持しています。ベースとなる食スタイルや睡眠サイクルや運動などの生活習慣を整えることは、ホルモンバランスを整える上でもとても大切です。

ダイエット&アンチエイジングに関係するホルモン

成長ホルモン・・・脂肪燃焼・代謝アップ・アンチエイジングホルモン

成長ホルモンとは、正式にはヒト成長ホルモンといい、老化を防ぐアンチエイジン効果やダイエット効果があることから「若返りホルモン」「ダイエットホルモン」とも言われています。

成長ホルモンと聞くと、成長期の子どもが体を大きくするために必要だったり、第二次成長期で必要とされるイメージが強いため、大人にはもう必要ないように感じられる方もいるかもしれませんが、若々しい体や肌を保つ事や、体の機能を維持するためにもとても重要なホルモンです。

大人にとっても重要な成長ホルモン

成長ホルモンは、骨や筋肉を作る、コレステロール値を下げる、代謝を上げる、脂肪を燃焼させるなど様々な効果があるのです。

見た目の老化の原因の一つが、代謝の低下です。代謝が落ちると、紫外線などで受けたダメージを修復する機能が落ちたり、新しい肌を生み出すサイクルがどんどん遅くなります。成長ホルモンの代謝作用をうまく利用することで、若々しく引き締まった体、若々しい肌を保つことができます。

成長期の子どもはたくさんの成長ホルモンが分泌されていますが、年齢を重ねるごとにその分泌量はどんどん少なくなり、だいたいティースプーン1杯分にも満たなくなると言われています。さらに、様々な要因で成長ホルモンの分泌も妨げられてしまうため、ポイントを知りしっかり分泌させる食スタイルや生活習慣を実践していくことが大切です。

成長ホルモンをしっかり分泌させるキーワード

  • 睡眠
  • 運動
  • 空腹

①睡眠

成長ホルモンは、熟睡して30分後、特に午後10時〜2時のゴールデンタイムに寝ているとしっかり分泌されます。10時は難しくても、12時には就寝できるがの理想です。

②運動

成長ホルモンには筋肉や骨の修復をする働きがあるため、運動することで分泌を促進できます。おすすめは激しい運動よりも筋トレなどをゆっくり行うスロートレーニングです。通常の筋トレでも、ゆっくり休まずにやると効果的です。

③空腹

成長ホルモンは血糖値を上げるホルモンでもあります。そのため、空腹時(=血糖値が低い時)に分泌されるので、しっかり空腹の時間をつくることが大切です。反対にいつでも何かを食べていると、常に血糖値が高い状態になるため成長ホルモンが分泌されません。

成長ホルモンの分泌を妨げるバッドキーワード

  • 高い血糖値
  • ブルーライト
  • 電磁波

①高い血糖値

成長ホルモンをしっかり分泌させるキーワードで「睡眠」と「空腹」をあげました。反対に、血糖値が高い状態で眠ると、せっかくゴールデンタイムに眠っていてもホルモンが分泌されない状態となります。これは、成長ホルモンが血糖値を上げる働きがあるホルモンであるため、血糖値が高い状態だと「今私は働く必要がないのだ」と認識されるためです。

理想的なのは、夕食は早めの時間にすませ、血糖値を上げる甘いものや炭水化物、糖質が多いお酒などを避けることです。こうすることで血糖値の上昇を抑えることができます。

夕食が遅くなってしまった場合、だいたい食後2時間は血糖値が高い状態が続くため、すぐに眠ってしまうと、成長ホルモンの分泌を妨げてしまいます。その場合は、ゴールデンタイムを意識して食べてすぐに眠るよりも、むしろゆったり時間をとって湯船につかるなどして時間を過ごすと、軽く運動したような効果が得られ血糖値も下がり、さらにリラックスもできるため睡眠にもスムーズに入り、ホルモン分泌もしっかり行われます。

②ブルーライト

スマートフォンやPCのブルーライトはとてもエネルギーが強く、目の奥の網膜にまで到達し、体内時計を狂わすほど刺激が強いものだと指摘されています。寝る前にスマートフォンやPCを見ると、交感神経が活性化して脳が興奮したり、良質な睡眠のために必要なホルモンのメラトニンが分泌されにくくなったり、結果寝付きが悪くなったりと、しっかりと成長ホルモンを分泌させる質の良い睡眠がとれなくなってしまいます。

最低でも寝る1時間前には、これらのものを見ることを控えるようにしましょう。

③電磁波

ブルーライトと合わせて、電磁波も質のよい睡眠を妨げるものです。枕元に携帯電話をおいて目覚まし代わりにする方も多いですが、これはおすすめできません。電源を消しても電磁波を発しているという指摘もあるため、目覚ましは目覚まし時計に任せて、携帯電話の電源は切り別の部屋に置いておくのがおすすめです。

このように、ちょっとしたポイントを知るだけでホルモン分泌をコントロールできるようになります。ぜひ生活の中に取り入れて、ホルモンにしっかり働いてもらい、我慢やストレスなくダイエットを成功させていきましょう。

 Lesson5-4&5-5 まとめ

  • 私たちの体はたくさんの働きを持ったホルモンが分泌されている。その働きをうまく活かすことが大切。
  • 食欲が我慢できないのは意志が弱いからだけではなく、ホルモンの影響も大きい。
  • ダイエットとアンチエイジングのために知っておきたいホルモンには、レプチン・ヒスタミン・セロトニン・インスリン・グレリン・成長ホルモンなどがある。
  • ホルモンが分泌しやすい食習慣や生活習慣、ホルモンの分泌を妨げるポイントを知っていると生活の中で意識しやすい。